読書習慣は、語彙力を育てる入口になるかもしれない
読み聞かせや家庭で本にふれる時間は、子どもの語彙力や言葉への関心を育てる一つのきっかけになると考えられています。忙しい家庭でも始めやすい、無理のない読書習慣の作り方を紹介します。
この記事でわかること
- 読書習慣と語彙力が、どのように関係すると考えられているか
- 忙しい家庭でも取り入れやすい読書の工夫
- 読書を「勉強」にしすぎないための注意点
ざっくり言うと
子どもの語彙力は、学校の勉強だけで育つものではありません。
家庭で本を読んだり、読み聞かせをしたり、知らない言葉について話したりする時間も、言葉への関心を広げる入口になるかもしれません。
もちろん、読書をすればそのまま語彙力が伸びる、という単純な話ではありません。家庭の状況や子どもの興味によって、合う方法は少しずつ違います。
大切なのは本の冊数を競うことではなく、子どもが「この言葉、面白い」「この話、もう少し知りたい」と感じられる時間を、家庭のペースで持つことです。
研究ではどう見られているか
米国小児科学会(AAP)は、幼い子どもへの読み聞かせを、早期リテラシーだけでなく、親子の関係づくりや社会情動面の発達にも関係する大切な機会として紹介しています。
また、家庭の中に本があること、読み聞かせの時間があること、子どもと本について話すことなどをまとめて「家庭のリテラシー環境」と呼ぶ研究もあります。こうした環境は、子どもの言語発達や読解力と関連する可能性があると見られています。
ただし、研究で示されるのは「関連」や「傾向」であり、すべての家庭に同じ結果が出るわけではありません。読書量だけで子どもの力を判断するのではなく、言葉にふれる機会を少し増やす、という見方が現実的です。
家庭で参考にするなら
まずは「毎日30分読まなければ」と考えなくても大丈夫です。
生活の中に短い読書の入口を置くほうが続きやすいかもしれません。
- 寝る前に1ページだけ読む
- 子どもが選んだ本を、途中まで一緒に読む
- 図鑑やマンガでも、知らない言葉を一つ話題にする
- 知らない言葉が出てきたら、一緒に「どんな意味かな」と考えてみる
大人が選んだ「良い本」だけに絞らなくてもよいでしょう。子どもが好きなテーマから始めるほうが、言葉への入口は開きやすくなります。恐竜、電車、料理、スポーツ、物語、マンガ、図鑑。入口は何でも構いません。大事なのは、本を通じて会話が少し生まれることです。
年齢ごとに入口は変わる
読書習慣といっても、幼児と小学生では入口が違います。
幼児期は、文字を読めるかどうかより、本を開くこと自体が楽しい経験になることが大切です。同じ本を何度も読みたがる子もいます。大人から見ると「また同じ本?」と思うかもしれませんが、繰り返しの中で言葉の響きや物語の流れを覚えていることがあります。
この時期は、最後まで読み切ることにこだわらなくても構いません。途中で絵を指さす、ページを戻る、好きな場面だけ見る。そうした読み方も、子どもが本に親しむ入口になります。
小学生になると、自分で読む力が少しずつ育ちます。ただ、自分で読めるようになったからといって、読み聞かせを急に終える必要はありません。少し難しい本を大人が読む、子どもが一段落だけ読む、交代で読むなど、読む負担を分ける方法もあります。
また、文字の多い本だけが読書ではありません。図鑑、地図、料理本、説明書、新聞の見出し、マンガのせりふなど、生活の中にも言葉にふれる場面はあります。子どもが興味を持った言葉を拾うと、「本を読む時間」以外にも語彙への入口ができます。
読書が苦手な子には、読む量よりも選べることが支えになる場合があります。表紙で選ぶ、短い本を選ぶ、音声で聞く、親が最初だけ読む。読む方法を一つに固定しないほうが、家庭では続けやすくなります。
会話につなげる読み方
読み聞かせは、最後まできれいに読むことだけが目的ではありません。 途中で子どもが絵を指さしたり、別の話を始めたり、同じページに戻りたがったりすることがあります。 その寄り道は、語彙や理解を広げる入口になることがあります。
たとえば、子どもが「これなに」と聞いたら、答えを一つ返して終わりにせず、「どこで見たことあるかな」と短く広げる。 好きな場面で止まったら、「この子、どんな気持ちかな」と一言だけ聞いてみる。 文字を読む量よりも、本をきっかけに親子で言葉を行き来させることが、家庭で続けやすい読み方になります。
小学生になると、親が読んであげることを幼く感じる子もいます。 その場合は、同じ本を一緒に読む必要はありません。 子どもが読んだ本、漫画、図鑑、学校で出てきた言葉について、「どんなところが面白かった」と聞くだけでも、言葉を整理する時間になります。
生活の言葉を拾う
語彙というと、本の中の難しい言葉を覚えることを思い浮かべるかもしれません。けれど、子どもの言葉は、買い物、料理、移動、片づけ、着替え、遊びなど、生活の中でも増えていきます。
たとえば、スーパーで「同じ」「違う」「重い」「軽い」、料理中に「混ぜる」「切る」「熱い」、外を歩きながら「坂」「影」「信号」「工事」など、日常には説明しやすい言葉がたくさんあります。親がすべて教えようとしなくても、子どもが見ているものを一つ拾って、短く言い換えるだけで会話になります。
大切なのは、テストのように確認しないことです。「これは何色?」「これは何て言うの?」ばかりが続くと、子どもによっては答えることに疲れてしまいます。「赤い葉っぱだね」「大きな音がしたね」のように、大人が先に言葉を添えるだけでも、子どもは聞きながら語彙に触れられます。
やりすぎないための注意点
読書を「語彙力アップのための課題」にしすぎると、子どもにとって本が重たいものになることがあります。
読んだ冊数を比べたり、読書感想を毎回求めたりすると、楽しさよりも義務感が強くなるかもしれません。
また、子どもによっては、文字を読むよりも聞くほうが入りやすい時期があります。読み聞かせは、子どもが自分で読めるようになった後も、親子で言葉を共有する時間として意味を持つことがあります。
読書が苦手な子を、すぐに「努力不足」と見ないことも大切です。文字を追うのに時間がかかる、集中が続きにくい、興味のあるテーマがまだ見つかっていない、学校の読書課題で苦手意識が強くなっている。背景はいろいろあります。
家庭では、読書を評価の時間にしすぎないことが助けになります。読んだ内容を毎回確認するより、「どのページが好きだった?」「この言葉、初めて聞いたね」と短く反応するだけでも十分です。
今日できる小さな一歩
今日できることは、子どもが目にした言葉を一つ拾って、短く話してみることです。
絵本の中に「ゆらゆら」という言葉が出てきたら、「何がゆらゆらしているかな」と聞いてみる。図鑑に「絶滅」という言葉が出てきたら、「今はいない、という意味に近いね」と言い換えてみる。
言葉をテストするのではなく、一緒に味わう。それだけでも、家庭でできる小さな読書習慣の一歩になります。